ピアニストの傷みと故障

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ピアノは練習するだけ上手くなるという訳ではありません。正しい指の使い方をしている人は稀で、間違った指の使い方をしていた為に上達が止まりピアノを辞めてしまう方も少なくありません。上級者やプロの演奏家でも基本練習は欠かしません。演奏時の指のカタチは自然に崩れてくるからです。正しいポジションと運指はとても重要です。

指には筋肉がありません
 いたずらに指を鍛えることは故障の原因になります。過度の緊張を指や腕に強いるべきではありません。指を鍛えるのではなく、正しいボジションと運指でテクニックの向上を目指すべきです。特に正しい姿勢、腕の位置、手首と腕のアーチ、手首の角度などを気を付けます。

筋感覚
ピアニストは何故間違わずに弾くことが出来るのでしょう?

一曲の中には両手合わせて少なくとも何百もの音符が出てきます。その上、足でペダルを扱ったりもします。目は楽譜を追っていることが多く、右手左手を注意深く一音一音見ながら弾くことは不可能です。ピアノはほぼ左右1メートルもあり、88個も鍵盤があり、左右の手を入れ替えることさえあります。ほとんど神業です。不思議ですよね。ここに人間の能力の素晴らしさがあります。その一つが「筋感覚」です。

 例えば、赤信号で車をとめているとき、足首がかゆくなったとします。目は赤信号を見ていますが、手を降ろしてかゆいところを掻くことことが出来ます。
また、自分の後ろ頭の一部がかゆくなった時、自分は全くその場所が見えていない(後ろ頭ですから)にも関わらず、キチンとピンポイントで触ることが出来ます。

これは人間の五感以外に別の感覚メカニズムが存在することの証しです。

でなければ盲目のピアニスト辻井伸行さんがあれだけ素晴らしい演奏をするのを説明することは出来ません。ピアニストが日々練習によって獲得しているものはこの「筋感覚」だとも言えます。

そして「筋感覚」が働く上で指や腕や体のポジションが大事なことは云うまでもありません。脳が認識しているポジションからずれてしまうと感覚は無意味になってしまいます。
ピアノを含めた体、腕、手首、指のポジションを正しい位置に置く事はとても重要なことです。そしてそれはピアニストによく起こる故障の予防にもなります。

脱力こそ全て!
ピアノ上達の秘訣を一つ教えてと聞かれたら、間違いなく「脱力」と答えます。

これは多くのピアノ講師の方が言っていることですが、あまり浸透しているとは言えません。

ちょっと早いフレーズになるとうまく弾けない方や音が揃わない方がいらっしゃいますが、
鍵盤を押すのではなく脱力して指を重さで落とす感覚を身に付けると楽に弾けるようになります。これは何よりの特効薬になります。

間違った力の入れ方で練習を重ねるのはかえってマイナスになります。大きな音の出し方は自然に身に付けるものであって指の力だけで行うのではありません。長い間続けると腱鞘炎やジストニアになり二度とピアノが弾けなくなる可能性があります。

指の神経(腱)は実はとても複雑に出来ていて間違った力の入れ方や腕のポジションはとても危険です。最初はうまくいかなくても根気よく頑張って身につけて下さい。

上手な方の演奏動画などを見てみて下さい。強い音を出す時にもほんの一瞬しか力は入りません。
大きな強い音を出すのは鍵盤を強く押すのではありません、素早く下ろすのです。試してみて下さい。